"若手人材学生塾(第4回)の概要

   11月15日(日)、午後2時、「第4回会津若手人材育成塾」が、Zoomによるオンラインの形で開始した。講演会をコーディネートする目黒公郎氏から本講演会の進め方について説明があった後、在京会津高校同窓会会長の大越康弘氏よりあいさつをいただいた。会長より本講演会の趣旨と開催までの経緯等について説明があり、3名の講師の方々をそれぞれご紹介をいただいた。
     最初の講師は、三菱商事(株)にお勤めの猪俣英希氏(高59回卒)であった。演題は「学生のみなさんへ伝えたい、就活・社会人の経験から学んだこと」。まず、キャリア形成に関してお話があった。ご自身が、日本代表としてチャレンジしたいという思いをもって早稲田大学で箱根駅伝を目指した経験を通して、キャリア形成を冒険に例えて、「目的地(やりたいこと)を決める」、「装備(自分の強み)を確認する」、「出発(面接・起業)する」という三段階で説明された。学生に対しては、「どんなチャレンジをしてきたのか、失敗や成功から何を学んだか、どんなの能力があるのか」を明確にして、面接官から共感、信頼、納得を得ることが大切である、と主張された。
 次に、社会人となってからは、有能なビジネスリーダーを目指していること、そして現在は何を突き詰めていくかを模索中であり、併せて英語能力、デジタルなど知識を習得に努力していると話され講演を閉じた。講演を通して資料をふんだんに共有しながら説得力のある講演であった。  「刺激的なお話であり、すばらしいプレゼンだった。」「若手社会人や学生にとって多くの示唆を与えるものだった」といった感想が述べられた後、質疑応答が行われた。以下に主なものを紹介する。
○ 今までの仕事を振り返って辛かったことは。また、それをどう乗り越えてきたのか。現在社会人として気をつけていることはどんなことか。
↓ 入社間もない頃は周囲との圧倒的な英語能力の差に苦労したが、英会話教室に通うなどその克服に努めてきた。現在は特に仕事内容のキャッチアップに努めている。社内の課題を考えるだけでなく顧客の課題を見つけようとしている。
○ インド駐在経験の中で文化の違いをどう乗り越えてきたのか。
↓ 三菱商事の企業理念は、所期奉公(社会・地球環境への貢献)、処事光明(公明正大な事業活動)、立業貿易(全世界・宇宙的視野に立脚した事業展開)の3つある。この理念をインド人社員とも共有しながら、One Teamで業務に邁進した。
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   次の講師は、GCAサクセション(株)取締役社長の二戸弘幸氏(高33回卒)であった。「キャリアの築き方/仕事・給料・やりがい」と題された講演は、自身が5回の転職を経験してきたことから始まった。35歳の時、勤めていた山一証證券が破綻し、仕事(M&A)とともに生きると覚悟を決めたと話された。そして続く。会社人生のキャリアとビジネス人生のキャリアとは違う。就業先の選定に向けては、自分の「志」と会社の「価値観」をどれだけ共有できるのかが大切である。「能力や成長、条件」だけで無く、「自分が何をしたいか」という観点でキャリアを築いていく時代である。最後に、次のように講演を締めくくられた。人生は決断の連続であるが、決める決断よりも決めた後の覚悟(後悔しないこと)が大事である。決めた以上は最後までやり抜くという覚悟の積み重ねがその人のキャリアとなる。
 講演後には、「給与で働くな、というメッセージは若い人たちにとって重要な指摘だった。」「自分もM&Aアドバイザー業務を行っているが、大変興味深く、大変参考になるものだった。」等の感想が述べられた。以下に質疑応答の主なものを紹介する。
○ M&Aアドバイザー業務の魅力は何か。成長する会社はどのような会社か。どのような社長か。
↓ 仕事の幅があり、業務を通じて自分の成長を実感できるところに一番魅力を感じている。M&Aの成功の確率は半分以下だといわれている。成長する会社の社長とは、リスクを恐れず揺るぎない信念をもって成功の可能性のために努力するような社長だと思ってる。
○ 強烈に利害の異なる2社をまとめてディールダウンするコツを教えてほしい。
↓ 反する利害について相手を尊重しながら交渉していくことが肝要だと考えている。その際には交渉をまとめる強い信念と人間性も重要であると思う。
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  最後を飾った講師は、笹川平和財団上席研究員の渡部恒雄氏(高34回卒)であった。
 演題は「米国大統領選挙と日本の戦略」。米大統領選挙はまさしく「コロナ選挙」であった、と切り出された講演は、トランプ大統領の何が問題なのか、選挙人制度の歴史と問題点、バイデン氏の勝因等の視点から具体的な説明が続いた。そして最後に、日本の生き残り戦略が示された。今までの「日米同盟に過度に依存した防衛戦略」「中国の経済成長への過度な依存」から脱し、「自由で開かれたインド・太平洋構想(日米同盟を基軸としながら、インド・豪州・ASEAN・欧州とのミドルパワー協力を目指すこと)」「サプライチェーンの戦略的見直し」に移行していかなければならない、と力強い提言がなされた。講演後、「我が国の安全保障の第一人者から直接お話を聞けて大変参考になった。」「アメリカ大統領選挙の歴史から選挙の複雑さまでわかり、日本の進むべき方向がおおよそ見えてくるお話だった。」といった感想が述べられた後、質疑応答が行われた。以下に主なものを紹介する。
○ 民主党の候補者がバイデン氏になった背景は何か。
↓ トランプ氏は相手をつぶすのがうまい。バイデン氏は枯れていて柳腰であるので絶妙なところでバイデンが候補者となったのだと思う。
○ トランプが大統領で居続ける手は残されているか。
↓ トランプ氏本人もその周辺も詰めが甘かった。選挙の不正の証拠は見つからないだろう。敗北宣言をしないのは訴追を受けないなどのディールをしたいのではないか。
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 予定の時間を30分ほど過ぎた午後5時30分に、3名の講演者への深い感謝とともに会は終了した。
佐藤 清美(高28回)

"会津若手人材育成塾の開催(2019年10月)

   在京会津高校同窓会として、10月26日(土)、グランドヒル市ヶ谷「芙蓉の間」において今年で3回目となる「会津若手人材育成塾」を開催しました。昨年は5月に会津学生・若手社会人セミナーと銘打って開催した企画です。事務局はこれまでの2回の開催経験を活かして、「どのようにしたら学生と若手社会人を集められるか?」、「学生が売り手市場の今、就職支援の必要があるのか?」、「企画が学生のニーズと本当に合っているのか?」など、昨年のセミナー受講者アンケートの分析から始めて約1年半をかけて話し合いながら準備をしました。
これまでは就活支援をメインに、若手社会人との交流を主題に企画して来ましたが、今年は就活の話よりも学生や若手社会人にこれからの社会人生活の一助となる何かを提供できなかと考え、人材育成塾という大きな視点で開催することにしました。そのためには、身近な先輩の話を伺うことで社会人生活へのイメージをより持ちやすくすること。その道の大家として活躍されている先輩の話を伺って、学生だけでなく若手社会人にもこれからの舵取りとして大いに刺激となること。会津への就職、再就職を考えている学生と若手社会人に対して適切な就業情報を提供すること。そして、この人材育成塾と参加者の出会いが継続的なものとなる様にグループ討議の時間を十分にとることなどを話し合いました。また、学生へのPRにSNS(LINE)を使った募集を行うなど新たな試みも行いました。その結果、残念ながらそれでも昨年より学生が減ってしまい、今年の会津若手人材育成塾は、学生4名(昨年9名)、若手社会人5名(同2名)、シニア社会人16名(同14名)の計25名(同25名)の参加となりました。
人材育成塾は大越会長のこれまでの思いのこもった開会挨拶により始まり、講演はサッポロビール株式会社 商品開発担当(10月からブランド戦略担当)沖井 尊子さん(高57)に「私の就職活動と、サッポロビールでの仕事」というテーマでスタートしました。ご自身の奈良女子大学への進学の経緯から就職活動までのエピソード、会社に入り長野支店の営業職に配属され、一時不安になったが、持ち前の努力といろんな取引先との繋がりを大切にするうちに営業職が好きになり、そこから社長提案をしながら数年後にエビスビールの商品開発部に抜擢されるガッツ溢れるお話。さらには、「エビスビール 華みやび」の開発を担当され、いろいろな工夫をして商品化までの何度も見直しながら十分な準備をして来た苦労話など、後輩たちがイメージし易いように丁寧に話していただきました。そして、後輩たちに会社を選ぶ時、どんな会社が自分に合うのか悩んだ時には、会社の経営理念などを見るととても参考になるとアドバイスされていたのがとても印象的でした。

つづいての講演は、膵臓外科医、東北大学 災害科学国際研究所 災害医療国際協力分野 教授 江川新一さん(高33)から学而会歌4番の初めの歌詞にもあります「学びの海に舵枕」というタイトルでお話いただきました。はじめに江川さんからビル・ゲイツも推薦する世界的なベストセラーとなった「FACTFULNESS」という本を紹介していただき、「ギャップマンダーテスト」という13問の3択クイズを参加者全員で行いました。世の中の真実について我々がどのように認識しているのか、クイズの答え合わせをしながらお話が進みました。クイズの一つを紹介すると「世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?」。答え「A約2倍になった、Bあまりかわっていない、C約半分になった」。正解はCなのですが、A、Bを選んでしまう人が多いとのことでした。世界は確実に以前より良くなっているのですが、さまざまな人が発信する情報で溢れる今の社会では、我々はイメージで事実と異なる認識をしていることが多く、時にはネガティブに考えすぎたりしてしまうので、事実に基づき世の中を捉えることがいかに大切かを改めて気づかせてくださいました。
クイズの後は、医師を志して東北大学の医学部に進学され、医師になって初めに勤めた病院は自分が生まれた竹田病院だったこと。当時の院長がご自分を取り上げた先生で、当時のことを鮮明に覚えていてくれたことなどを話され、竹田病院時代に色んな分野をこなし医師として経験が向上したとしみじみ仰っていました。その後の留学生活と膵臓外科医としての活躍、東日本大震災をターニングポイントとして災害医療へ携わることになったお話とつづき、肝臓、すい臓、癌の話、震災の経験と皆さんお話に引き込まれていました。現在携わられている災害医療で大切なこととして、「複合化する災害リスクに対して、リスク毎に対策を考えるには限界があり、いかに連携してリスクをコントロールするか柔軟に対応することが必要となっている」とお話されていたのが強く印象に残りました。

そして、最後の講演者は福島県会津地方振興局次長の市村尊広さんで、会津人より会津を理解し思いを込めた語り口で「会津地方創生について」として、県内の会津地方の県内外就職率など様々なデータに基づき会津地方の就職環境についてお話していただきました。データによると会津地方は県外就職率が一番高い。また、中小企業が少なく、就職先としていきなり大企業になる点が就職環境として特徴的だと教えていただきました。会津若松市はITによるスマートシティ構想に力を入れているなど、是非、会津を就職先として選んで欲しいとPRされていました。
 講演の後は3つのグループに分かれて先輩方の司会で懇談会を行いました。今年は、グループ懇談会にも十分な時間が取れるようにしたので、若者が自分の悩みや就職に関する不安などを先輩達にぶつけ、先輩達は経験に基づいたお話を学生に伝えるという風に一方通行ではなく相互に話のバトンを渡しながら懇談している様子が見て取れました。
最後にセミナーは事務局 平山代表(高19回)から「若い人は、日に新たに自分を磨いてください」とのメッセージを添えた挨拶があり、閉会となりました。その後は恒例の懇親会となり、場所を同窓会事務所に移して、エレベーターが更新工事で使えない中、事務局の佐々木さんが階段を何往復もして用意してくれた手料理と会津のお酒を堪能しながら講演者を交えて参加者と一層の懇親を深めました。
今回の企画についても事務局で検証して、引き続き学生・若手社会人の参加者を増やせるように検討して行きたいと思います。最後に、開催にご尽力くださいました皆様にお礼を申し上げてご報告とさせていただきます。

平山信次(高19回)、佐藤 清美(高28回)、目黒公郎(高33回)、久住川順一(高39回)、北澤美恵(高61回)